狼は王子様!?
「じゃっ、お母さん呼んでくるから。じっとしてるのよ」
「……はあい」
おばさんが家を出て行く。
お母さんもおばさんもいない、今がチャンス! 椅子を立つ。「美麗ちゃん、どこ行くの?」そうだった。
おばさんの家にはもう一人いたんだっけ。ついてないなぁ。
「え、と、トイレ……」
「ふうん。着物は大変だから手伝ってあげるわよ」
「い、いいよ」
じいっと見つめられる。
私は大人しく椅子に座るしかなかった。
「逃げ出そうたってダメよ」
「……はい」
そう返事すると、玄関のドアが開いた。おばさんとお母さん。「まあ、美麗。見違えたわ」
「美麗ちゃんのめでたい日だもの。頑張ったわよ」
2人で盛り上がらないでよ。私は嫌々儀式を受けるのに。
「美麗、今日は絶対外に出ちゃダメだからね。儀式が始まるまで、家で大人しく遊んでて」
「どうしてえ」
「儀式が始まる前に、姿を見せちゃダメなのよ。もし見られたら、その人は大人として認められないの」
「……ふうん」
そっちの方が、私的にはいいような気がする。大人になったってつまらないだけ。
大人になりたくない。
子供でいたいよ。まだたくさんたくさん遊びたいな。
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