となりの女の子
いつもなら、宿題すら終らせれずにいたのに対し、
多少だが、勉強までするしかなかった夏休みが明けて早々、
寛太のクラスでは気分を新たに席替えがおこなわれた。


「またおまえが隣りかよ〜。」


ただ、左右が入れ替わっただけの寛太と優菜。


「はぁ!?それはこっちのセリフです!」

そんな言葉と裏腹に、優菜の方は嬉しい気持ちを抑えるのに必死といった様子。


そこへ、優菜の前の席に座る女子が後ろを振り返り、

「なんか優菜さぁ、日沼の世話係にでもさせられちゃってるんじゃないの?」

憐れむように言うと、

「世話係ってなんだよ。」

「ホント、勘弁してよね!」

「まさか兄の方に“弟の面倒もみてやってくれ”って頼まれてたり?」

「ちょっと!!」

「あは、冗談にきまってるでしょう。」

途端に状況が一変。


(これなら前の席の方が良かったな…)

と、寛太の様子を横目で伺ってみると、特に気にしていないように見みえたのだが、
この先、安心はできないことを悟る優菜だった。


そんな緊張感の中、三時間目が終った頃のこと…

「日沼!」

「ふぁい?」

野球部の顧問がやってきて

「ちょっと来いや!」

「は?…なんだ?」

そんな時も

「どーしたの?なんかやったんじゃないの?」

口出す彼女に

「なんだよソレ?」

と、一言だけ放ち
制服の乱れを整えながら教室を出ていく寛太。

そしてその後ろ姿を、ただ目で追うだけの優菜だった。
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