となりの女の子
総体の二回戦目にして、優勝候補と言われていた学校と当たった事はツイていなかったが、全くの不運ではなかった。

偶然、相手校の選手の様子を視察しに来ていた高校の野球部関係者の目に寛太のプレイが目についたらしい。


顧問の先生の話はこうだ−−−−

『あちらこちらの中学から、有力者が大勢集められてくる。
そして、その中からベンチに入れる人材が抜擢される。
無名校の選手が篩にかけられ、認められるには相当の努力が必要だ。
ただ頑張るだけではなく、結果を出さなくては話にならないのだから…』

脅しにも聞こえる話に、寛太も怜子も、ゴクリと唾を呑み込んだ。


その日の夜…

日沼家で家族会議が開かれた。


部屋で勉強に励む颯太は、関心が無い訳でも、蚊帳の外な訳でもない。

いくら双子でも各々が進路に向けて必死な訳で、
お互い、結果が分かればそれで良い…そんなところだった。


リビングで怜子から説明を受け、寛太の話を熱心に聞く父親は言った。


「父さんも大学時代に寮に入ったよ。身の回りの事とか大変だったけど、それなりに楽しかった。だけどお前の状況とは大分違う。高校生だし…スポーツ推薦となると身体が資本だ。体調管理も自分でやらなきゃならないし、野球と勉強も両立しなければならない。」

「分かってる。普通に受験したんじゃ、到底受かるワケないレベルだって事も理解してる。」

「…どうしても、ソコじゃなきゃダメなのか?野球なら他にも」

「自分を試したいんだ!やれるだけやって、自分で納得しないと…先になんか進めない!」

「頑張れるんだな?」

「やれる!」

「…わかった。なら父さんも応援する!やってみろ!」

「うん!!」

「ん。」


リビングの緊張感がとけたことが二階の颯太にも分かった。
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