鉄の救世主(くろがねのメシア)
被災者を危険から遠ざける為に。

彼女達も必死に考えて誘導している。

しかし隕石は矢継ぎ早に飛来し、戦術自衛隊の想定外の場所へと落着する。

予想を上回る規模と範囲に、戦術自衛隊の隊員達も困惑していた。

『ここならば絶対に安心』と、胸を張って市民達に言ってやる事ができない。

いつまでも恐怖と不安に晒したままにしておかなければならない。

あの幼い男の子が思わず口にしてしまうのも、仕方がない事なのだ。

それでも。

「そんな事言わないのっ」

男の子の母親が窘める。

彼女は麗華の顔を見た。

「戦術自衛隊の皆さんは、本当によくやって下さっていると思います。私達は皆さんを信頼して指示に従いますから…本当に感謝しています」

「……」

誰も守れていない。

危険から遠ざけてやる事すら出来ていない。

なのに感謝されている事に、麗華は唇を噛んだ。

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