鉄の救世主(くろがねのメシア)
胸ぐらを掴んだまま、豊田は男を揺さぶった。

「いい? 私達は生きなきゃならないの!生き残った人間は、生き延びられなかった人達の分まで生きる義務があるの!生きたかったに決まってるじゃない!皆生き延びたかったに決まってるじゃない!なのに生き残った人間が、勝手に生き延びられた命を捨てるなんて許されないのよ!分かってるのっ?ねぇっ、分かってるのっ?」

ボロボロ涙をこぼしながら怒鳴る豊田。

その手を。

「!」

小川が、そして麗華が掴んで止めた。

「もういいだろう豊田…彼も理解した筈だ」

「……」

涙でくしゃくしゃになった顔で、豊田は小川を見た。

…悔しかった。

この男が自暴自棄になったのも、全ては彼の家族を守りきれなかったが故。

男を責めているように見えて、実は豊田が責めているのは自分自身だった。

そんな彼女に。

「ありがとな…」

男は泣きながら呟く。

「ありがとな、戦術自衛隊の姉ちゃん…あんたみたいな人に止めてもらえて、俺本当によかったよ…」

…その後、彼は拳銃を盗んだ罪で警察に引き渡され、連行されていった…。

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