鉄の救世主(くろがねのメシア)
「豊田」

男が連行された後、小川がカップに淹れた温かいコーヒーを差し出す。

「有り難うございます」

73式中型トラックの荷台に腰掛けていた豊田は、微かに微笑みを浮かべてそれを受け取った。

「…少しは落ち着いたか」

「…すみません、取り乱してしまいました」

小さく頷いた後、彼女は呟く。

拳銃を突きつけられた事、襲われた事よりも、自分が守れなかった者が自暴自棄になって暴徒のような行動をとった。

その事が豊田は何よりショックだった。

< 76 / 109 >

この作品をシェア

pagetop