鉄の救世主(くろがねのメシア)
埃と煤を浴び、汚れた顔に滴る汗を拭う小川。

昨日の傷もまだ完全には癒えていないが、動ける以上は休んでいる暇はない。

自分だけではない。

豊田や麗華は勿論、他の隊員達も各地で任務に従事している。

甘えた事は言っていられない。

『普段何の為に訓練してるんだ』

救うべき被災者に告げられた辛辣な言葉。

しかし、確かにそうなのだ。

こんな時の為に、戦術自衛隊は毎日の訓練を欠かさず続けている。

強靭な肉体と精神力を養う為に。

有事の際に弱き者の盾となる為に。

身を張って危険や苦難から人々を守らなければならないのだ。

汚れた顔を再び下に向け、足元の瓦礫に手を伸ばす。

その顔が。

「!」

何かに気づいたように上げられた。

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