━ Are You Happy ? ━

□狂った愛


ぼやけた視界は

白い靄の中


紅 が際立って浮かんでた


その 紅 に焦点を合わせる


徐々にピントが合って

私を上から見下ろすリュウと視線が絡まる


条件反射的に

アルカイックスマイル





『………ぇ?』





優しく微笑むリュウの口許が

異様に紅々しく


視線をずらせば


身体の所々に

紅い模様が付いていた








その “紅” が


私のものだと理解したのは





『綺麗だろ』


私に触れるリュウの指先を辿ってすぐ








人の五感は


ひとつ失われると

その他の感性が研ぎ澄まされると聞いたことがある


なのに私は


視覚 を奪われていたのにも拘わらず


刃物が身体を這う 触覚 には


気付けないでいたらしい





剃刀で切った程度 の傷は


私の 身体中 にあった





視覚から伝達され


脳は 今やっと


“痛み” を認識し


僅かに臭う


鉄臭さ を理解する





『お前、イくとき暴れっから
ココ…深く入っちゃったじゃん…』


小さなナイフを押し当てた私の太股からは


一筋の血が流れ

リュウはそれを舐めあげる


『せっかくの“アート”なのに…』





薄く

血が滲む程度を計算して傷を作るのが

いかに大変か とか


シンメトリ でないと意味がない とか





理解できない内容を

淡々と話し続けるリュウの目は


狂気





『狂ってる………』





そして


今頃になって やっと





そう気付く



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