忠犬彼氏。
『璃子先輩』
そう呼んで懐いてくるアイツは私の理由だった。
アイツが私を求めているから私はここに立っているんだ、と。
でももうそれも叶わない。
だからまた私は偽善を盾に生きていく。
私の頬に一筋、涙が跡を作っていった。
「璃子先輩」
これは幻聴?
シャッと勢いよくカーテンが引かれカーテンの向こう側にいたであろう人の姿が露わになった。
「泣いてるんですか?」
「……」
なんでこんなに安心してるんだろうか。
確かに私は今、柴に対して恐怖心を抱いてる。
でもそれ以上に安堵感があった。
「先輩……
どんなに先輩が俺を突き放しても、先輩のことは大好きですからね」
なんでコイツはこんなにも優しいんだろうか……。
私は耐えられなくなって柴に背を向けた。
「聞きたくなかったら耳をふさいでいてください。」