忠犬彼氏。


「璃子先輩に出会って、わかったんです。
どんなに頑張っても手に入らない、だけど……手に入れたくて仕方のないものが存在すると」

そうか、柴は昔の私なんだ。


「手に入らなければこのままいなくなっても構わないくらい……」

中学時代の私と、同じ。

「俺の隣じゃなくていいから
笑っていてくれさえすれば、それでいいだなんて……俺には言えないです」

幸せにするのは自分で……ほかの誰でもない。
そんな甘い未来を考えては


突き落とされた。

「だから先輩、俺待ってます。
それでも無理なら……今ココで身を引きます」

静かに踵を返したような足音が聞こえた。

このままだと柴は行ってしまう。
永遠に私から離れていく。

キミの瞳に映るのは、私じゃなくなる。



「し、ば……!」

気が付けば私は柴を呼び止めていた。

震えた小さなカッコ悪い声で。


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