百もの、語り。


ピッピとチャンネルを回しながら、
再び誰かの姿が映し出された画面に。


友達はそこで手を止め、
ニヤリと笑って言った。

「実はさ、これ、覗けるんだ」

今も、覗いていると言えるだろうに、
よくわからない事を言う奴だ。


彼は手を、画面の前へと突き出した。

そしてそのまま、向こうの誰かへと伸ばす


すると手は、画面の中に吸い込まれるように消えてしまった。


代わりに、
映し出される向こうには、
手首から先の存在が増えていた。


「遊べるし、まあ暇はしないよ」

手を引き抜いて、彼は言う。


「……そういやさ」

突然疑問が湧いて、俺は彼に尋ねた。


「お前、死んでるよな?」

「うん、今さらだけど」


「死んだ奴に、死因聞かされるって
俺、心霊体験してた訳?」


死んだはずなのに、
この友人は俺の前に現れて、
女に殺されたと言っていた。

普通に考えると、おかしい。


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