百もの、語り。


そして、音は少しずつ、
自分たちのテントに近づいてきている。
そんな感じがしました。

『……お姉ちゃん』

「き、気のせいよ、大丈夫」

自分でも声が震えているのが解りましたが
そう言い聞かせる以外、何も出来ません。

両親は隣に張ったテントで寝ています。
助けを求めに行くには、
1度、出なければなりません。

ずるずる。

ずりっ。

テントの前で、音が止まりました。

私と妹は、息をひそめて、
どこかへ行くのを、じっと待ちました。

しばらく音は止んでいましたが
少しすると、また引きずる音が始まります

よかった。と、息をついたのもつかの間
音はどうやら、自分たちのテントの横、
後ろ、そしてまた、正面へ。


……回っている。

ぐるぐる、ずりずり。

何周も、繰り返しているようでした。


気が付くと私は妹と抱き合っていました。

無意識にそうする程に、怖かったんです。


そして気が付くと、朝になっていて
お母さんが私たちを起こしに来ました。


安心して外へ出ると、
テントの周りの草は擦り切れていて
何かをひきずったあとが、
確かについていました。



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