NIGHT MOON
その一方。



「朱里?」



「朱里先輩?」



昼休み、社員食堂で朱里は
友達の同僚や後輩達と昼食をしていた。



しかし名前を呼ばれているのに
朱里はスプーンを持ったまま
ぼんやりしている。



「朱里ってば聞いてる!?」



「………えっ?」



やっと気が付いた朱里は辺りを
キョロキョロする。
それを見た友達は言う。



「どうしちゃったの?」



「別に何でもないよ」



言いながら
昼食のライスを口に運ぶ。



「ねぇ朱里?」



「何?」



「今夜暇?みんなで飲みに行くんだけど朱里も付き合わない?」



「あたし、今日これから明日の会議に使う資料集めしなきゃいけないから残業なの。だから無理」



「明日の会議?それならさっき中止に決まったわよ」



「嘘…」



「詳しくは分からないけど部長が朱里にそう伝えてくれって」



「そう…」



「という事なら今夜は暇よね?」



「うん。とりあいずはね」



「よしっじゃ相手側に連絡しておかないと」



友達は携帯電話を取り出して
誰かにメールを送信していた。



「ちょっと環(タマキ)相手って何?」



「あ、言い忘れてた。今日の飲み会はR会社の営業部の人達なの」



「つまり合コンって事?」



「そう!Rの営業っていったら、レベルの高い男が沢山いるって有名よ。このチャンスにお知り合いになってゲットしようって作戦」



「上手くいくわけ?」



「朱里、冷めてるわね。笹本さんの事まだ引きずってるの?そろそろ新しい恋した方がいいよ」



友達の環は朱里が
夜月と付き合いのある事を知らない。



「やっぱりあたし行けない」



「えーいいじゃん。朱里が来ないと一人余っちゃうよ」


「悪いけど他の人誘って」



そう言うと朱里は一人で席を
立って社員食堂を出て行く。
そんな朱里を見た環は言う。



「やっぱりまだ笹本さんの事」
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