ヒロイン 完
聖なる夜。


いつからサンタクロースの存在を否定したんだっけ。


もう覚えてないな。


でも幼稚園の年長さんの時は既に知ってたかな。



「はい、最後の一杯」


「あ、どうも」



電気を消した部屋。


泉さんの寝室からネオン輝く街並みが一望できた。



「寒くない?」



そう言って彼はタオルケットを肩から掛けてくれた。


私が寒がりなことを彼はよく知っているから。



「ありがとうございます」


「ちょっと酔った?」


「あはは、そんなことないっすよー」



疑わしい視線を向けられたから逃げるようにグラスに口を運んだ。



「何考えてたの?」


「え?」


「ぼーっとしてた」



さすが泉さん。



「サンタさん、来ないなって」


「信じてるの?」


「まさか、信じてませんよ」



外が寒いから窓ガラスが白く曇り街にモザイクが掛かって見える。



「湊ちゃんは何が欲しいの?」



何が欲しい?


何も欲しくない。


何もいらない。

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