ヒロイン 完
「駄目そう?」



気を使う声が頭の上から降ってくる。


首を振って応えた。



「だ、大丈夫です。いつものことですから」



言ってからヤバイと思った。



「いつもなの?」



伺うように顔を近付かれる。


ち、近い!


やばい。


今、絶対顔真っ赤だ。



「奈緒ちゃん?」


「へ?」



私は、おにーさんを凝視してしまった。


な、何で私の名前……。



「あ、ごめんね。これ……」



そう言って、おにーさんはポケットから何かを取り出した。


握った手が開き、そこに乗っていたのは……。



「私の、ドッグタグ……」


「一昨日、ぶつかった時に落として行ったんだよ。奈緒ちゃん」



一昨日ぶつかったの、このおにーさんだったんだ……。


知らなかった。


不良かもと思ってすぐ逃げちゃったから。



「あ、ありがとうございます」



ドッグタグを首に通し、礼儀正しく頭を下げた。



「いえいえ」



ふわっと笑う顔に何故か涙が出そうになった。



「あ、あのお礼……」



私は鞄の中を漁った。



「こんな物しか、今何も持ってなくて」



差し出したのはチュッパチャプス。


ちなみにオレンジ味。


私の大好物。


おにーさんはクスッと笑って、ありがとうと受け取ってくれた。
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