桜の花びら舞う頃に
「あの技は、そこで彼らがやってたんだよ」

「それで覚えたってわけか」



悠希の言葉に、玲司は納得したように言う。


「でも意外~!」

「ね~」


麻紀とさくらは、顔を見合わせる。


「悠希くん、格闘技に興味あったんだ?」


意外そうな顔で、2人は悠希を見つめた。


「悠希はね……」


玲司は親指で悠希を指す。


「昔、空手やってたんだよ」

「えー?」

「そうなんだ~!」

「うん、しかも、結構強かったらしいよ」

「昔の話だよ」


悠希は笑った。


「俺は小さい頃、体が弱かったから、親に色々習い事させられてたんだ」


悠希は目を細める。


「その中の1つに空手があったんだけど……」


手を見つめる悠希。


「やってるうちに面白くなってきて……よく、気の合う仲間と強くなるために特訓したものさ」


悠希はそう言って、懐かしそうに笑った。


「彼らを見てたら、昔の自分を思い出して、つい見入ってしまったんだよね」

「そうなんだ~!」


さくらは、感心したような声を出す。


「打ち込めるものがあるっていうのは、凄くいいことだよね!」


目を輝かせる。


「でも、高校は野球部だったんでしょ?」


麻紀がたずねる。


「ウチらの高校は、空手部なかったからな~」


玲司は笑った。


「それに、野球も好きだったからね」


悠希も笑う。






悠希の過去を知ることで、4人の距離はいっそう縮まってく。



居酒屋の一角からは、4人の笑い声がいつまでも響き渡っていた。












< 116 / 550 >

この作品をシェア

pagetop