桜の花びら舞う頃に
「じゃーね、パパ! バイバ~イ!」


拓海は靴をはき終えると、玄関から大きな声を出す。

そして、元気に飛び出して行った。




元気の塊とも言える拓海がいなくなった部屋は、途端に静かになる。




「なんだか……孤独だな……」


悠希は、つぶやいてみた。

自分の声が、とても大きく感じる。


「あ、そうだ……会社に電話しなきゃ……」


悠希は、ワザと明るく振る舞って枕元の携帯電話をつかみ上げた。


「……おはようございます、月島です」


会社に、風邪で休むことを伝える悠希。


「ふぅ……これでよし……」


少し緊張していたせいか、電話を切った後、自然とため息が漏れた。


「それじゃ……早く治すために……一眠りしようかな……」


そう言って、再びタオルケットを引き上げる。


「起きたら……多少は良くなってるといいな……」


悠希の意識は、夢の世界へ溶けていった……









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