青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


バッカだなハジメ、俺は抜けられる筈ないんだ。

どっぷりと不良の世界に肩まで浸かっちまった残念平凡不幸少年なんだから。

今更抜けたくても抜けられないっつーの。

抜けられるもんなら、俺はとっくに舎弟の名前を返上してジミニャーノ星に帰還してるぞ。
薄情三人組と悠々地味にひっそり学園生活を送っているって。


きっと、この世界を追い出されたらこれ以上にないってくらいヘコむ。
それだけ俺の居場所になってるんだから。

不良は苦手なのに、不良と一緒にいたいだなんて…、ったく、ヨウのせいだぞ、こんな風に俺を地味不良に導いちまったのは。
 

正直噂や環境の変化に不安ばっかな毎日だった。
 

本格的に良識ある生徒達から距離を置かれて、んでもって担任に“中途半端”って言われたから、「あれ…俺、あいつ等にまで距離を置かれたらどうしよう」とか、不安を抱いちまって。

大丈夫だって言い聞かせてはいるけど…、ヨウは、ここ数日の俺の不安をずっと見抜いてたのかもな。


なんだかんだ言っても、内心の俺は取り巻く環境に戸惑いっぱなし。ヘコみっぱなし。不安を感じっぱなしだったから。


だからヨウ、ワルデビューさせるとか、担任を見返すとか言い出しちまって。


―――…ほんっと、あいつには敵わないよな。
 

「抜けたらあいつ、ぜぇって怒るから抜けないって。
ま、抜けろって言われた日には、俺、日賀野の舎弟にでもなるよ。未だに向こう、勧誘してくるし。青メッシュでも入れて、向こうのボスとオソロにしてやる」


ニヤッと二人に笑って短くなった煙草を銜え直す。揃って二人は笑声を上げた。


「うっはっ、ケイそれ最悪! ヤマトの舎弟になるとか、どんな昼ドラ展開! 修羅場が目に見えてウケるんだけど」
 
「しっかも俺、抜ける時にはココロとキヨタは絶対に連れて行くんで宜しく」

「ぶふっ、それじゃあ実家に帰るママさんじゃじゃじゃん! 修羅場確定! ちょ、言ってみてよーん。実家に帰りますって」
 

丁度、ヨウがお盆を持って部屋に戻って来た。

俺等の笑声が聞こえていたのか、「ナニ盛り上がってるんだ?」質問してくる。

ほらほらほらぁ、期待した眼が二つ飛んでくるもんだから、俺は息をついた。

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