青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
こっちが奇襲攻撃を返しても、体勢を整えるために一旦引いて入り組んだ路地裏に逃げちまうんだ。
おかげさまで今、隊長(ケイ)は引っ張りだこだ。
連絡が間に合わないから俺の携帯を使って、あっちこっちに指示を出している。
見るからにパンク寸前だったみてぇだけど、あいつなら乗り切れる。
俺の舎弟だしな。
「けど、俺達も用心しねぇと相手が逃げっ、くそっ。一時身を引き始めやがった!」
ヨウ達の出現によって体勢を立て直すためか、楠本側の不良達が脇目も振らず路地裏を駆け出す。
逃がさないよう指示を送るヨウ自身も奴等を追うために駆け出した。
当然、蓮もそれについて行かなければならないのだが、蓮は視線を上げて宙を睨むと敢えて踵返し、「仲間を頼む!」路地裏から飛び出す。
「あ。おい!」
ヨウの呼び掛けを無視し、蓮は痛む鳩尾も気にせず大通りに出た。
大通りすぐ側では、バイクが数台停まっており、そこに携帯で連絡を取り合っているヨウの舎弟がいる。
蓮は密集したバイクの固まりを通り過ぎ、「え。蓮さん?!」ケイの素っ頓狂な声音を聞き流して、手前の路地裏に飛び込む。
一本道のそこは生臭さがやけに際立っていた。
雨のせいで悪臭が増したのだろうか?
小降りから本降りになったせいか、雨水を制服が吸って重みが増していく。
動きが鈍くなるものの、蓮は前髪から滴る雨水を払いのけて走った。
行き止まりと言わんばかりの二メートル近い金網フェンスに差し掛かると、そこをよじ登り、落ちないよう足元に注意を払いながらビルの壁際へ。
外付けの非常階段の柵に手を伸ばし、勢いづけてそこに飛びつく。
ガシャン、左右に体を揺らすフェンスの悲鳴をBGMに柵を越えて踊り場に下りた。
息つく間もなく、階段を駆け上る蓮は屋上を目指した。
(此処のビルは非常階段が両側についていた筈。だから屋上から向こうに非常階段に行けばっ…、楠本のいた場所に辿り着けるっ)
この勝負、“エリア戦争”の時のように親玉を倒さなければ終決しない。
どんなに向こうの不良達を伸そうと、頭を倒さなければ終わりは来ないのだ。
すべてを終わらせるためにも、楠本を倒さなければ、自分の手で倒さなければならない。
鉄板の階段を上りきり、すぐさま向こうの非常階段に向かう。
が、蓮は足を止めてしまった。
何故ならば向こうの非常階段に赴く必要がなかったからだ。