青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「楠本」弾んだ息を整えもせず、蓮は相手の名を紡ぐ。


恍惚に空を見上げている楠本は、雨粒を顔に当てながら「サキさんが消えた日も」雨だったんだぜ、と蓮に教える。
 

「まるで煙のように消えちまったんだ。プライドの高い人だから、敗北が屈辱で仕方がなかったんだろうけど…、俺にはショックで仕方がなかった」


だってあの人は俺に居場所をくれた人なんだ。


自分の凶暴性さえ受け入れ、常について来いと側に置いてくれた舎兄には多大な恩義がある。


「お前は」


チームを追い出された経験なんて一度たりとも無いんだろうな、楠本は視線を戻し、眼球だけ動かして見据えてくる。


「俺は幾つものチームを追い出され転々としていた野良不良。その野良がやっと見つけた居場所だった。
サキさんは、俺にとって本当に大切な兄貴だったんだ。
あの人が俺に居場所をくれたなら、俺もまた居場所を作ってやりたい」
 

どんな手を使ってでも、あの人が堂々と戻れる空間をこの手で作ってやる。


不敵に笑う楠本は、「だからお前等。邪魔なんだ」さっさと消えてくれよ、言うや否や地を蹴ってきた。


懐に入れようとする拳を受け止め、蓮は楠本の空いた手に注意を向ける。


空いた手は制服のポケットに突っ込まれていた。


護身用のスタンガンを持っていることを既に認識している蓮は、どうにかしてスタンガンだけでも処分してしまいたいと思案を巡らせる。

「それに蓮」お前は力でこっちに屈服したくせに、ノウノウと元の鞘に戻っている。


それがいけ好かないと楠本はスタンガンのスイッチを入れて、蓮の体に突き押そうとする。

紙一重に避けた蓮は「あいつは間違えたんだ!」と、声音を張った。


「お前がどれだけ榊原のことを慕っていたか、そりゃ知ってる。だけどな、あいつはやり方を間違えた。そうだろ?!」

「間違いなんてどうでもいいんだよ! サキさんは俺にとって、俺にとってっ…、裏切りのせいであの人は消えちまった!」

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