青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
と。
道端で騒ぐ俺達の声に、シズが反応。
重たそうな瞼を開き、気だるそうに顔を持ち上げた。
状況が分かっていないのか、ヨウの背に目を落として一傾げ。
周囲を見渡して一傾げ。
俺に視線を留めて一傾げしている。
「俺が分かるか?」
シズにおずおずと声を掛けるけど、向こうの反応は鈍い。いや、鈍かった。
だけどしっかり俺達のことを認識したシズは、何処か焦ったように無言でヨウの背中から下りると、靴下のまま駆け出してしまう。
ちょ、え、えぇえええ?!
なんで逃げられるんだよっ!
俺達を幽霊だとでも思ったか?!
「おい待てよシズ!」
急いでヨウが後を追い駆けた。
二人とも大概で足は速いんだけど、今のシズは弱っているのか、あっという間にヨウの手で捕獲。逃走劇は早々と幕を下ろした。
「どうしたんだよ」
ヨウの問い掛けに、終始無言のシズは顔を背けたまま手を振り払おうと躍起になっている。
「シズ!」ヨウの喝破に怖じることもなく、右に左に腕を振るシズ。
その内、「頼むから」放してくれ、今は駄目なんだと支離滅裂なことを口走る。
久々に聞くシズの声はびっくりするくらい掠れていた。
なんだかただならぬ光景に俺も焦り、チャリを手放して駆け出す。その場にチャリを倒してしまうけど構わなかった。
「シズ。ちょっと落ち着けって! 俺達だって! ……分かるか?」
俺の呼びかけには無反応。
放してくれ、荒々しくヨウの手を振りきろうと拳を向けた。
まさかあのシズが俺達に暴力を振るうなんてっ、だけどシズの拳、俺の目から見てもスッゲェ弱々しい。
本気で殴り飛ばそうという気はないんだろう。
パスッとヨウの体に当たって、その拳が、腕が、頭(こうべ)が力なく垂れ下がる。
「なんでお前達が」
今は会いたくなかった、どうしても会いたくなかった、泣き笑いするシズに俺はなんて声を掛ければいいか分からない。
「会うと絶対…、決心が鈍る…、だから会いたくなかった。終わらせるまで…、終わりを…、掴むまで。お前等には、絶対に」
こんなにも弱り切ったシズ、初めて見たんだけど。