青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「…って、えぇええ?! お前、何してるんだよヨウ!」
次の瞬間、ヨウがシズの腹部に肘鉄砲を入れた。
目を白黒させている俺や呻いているシズを余所に、「うっし」これでもう逃げられる力は出ねぇだろ、とイケメンスマイル。
お、お前には慈悲っつーもんがないのかよ!
今の空気はシズの雰囲気を気遣ってやるところっ。
いや、戸惑うところだろーよ!
なに、トドメを刺してくれちゃってんの?!
お前は鬼か!
「ヨウ…、お前…、加減くらいしろ。ガチ…、だろ、今の」
「逃げるテメェが悪いんだろうが。俺はまどろっこしいのはごめんなんだよ。
だってアタマわりぃし?
なんか遭ったってのはわーったから、さっさと話せって。言わねぇとこっちも分からん。手間の掛かる奴だな」
寧ろ俺達に感謝しろよ、こうして心配にやって来たんだから。
散々恩を売りつけるヨウは片膝をついて腹部を押さえているシズを無理やりおぶると、「仕方がねぇな」戻るか、踵返して歩き出す。
「えぇえっ?!」
戻るのかよ、俺は倒したチャリを起こすと急いでヨウの背中を追った。
「しゃーねぇだろ。ゆっくり話せる場所が必要だし」
「べつに俺の家でいいじゃんか」
「じゃあ何か? テメェひとりでシズの靴、取りに行ってくれるのか? 俺は無理だぞ。こいつを見張っとかないとなんねぇから。
目を放すと今度は道路にでも飛び出しそうだからな。
今のこいつ、メシ食ってねぇから判断力が鈍ってるだろうし。誰かが付いてねぇと」
「……、そんな馬鹿な事はしない…、そしてそこまで自分は…、単純じゃない」
「うるせぇな。テメェは黙っとけ。で、ケイ? テメェ、ひとりで取りに行くのか? だったら俺とシズ、此処で待っとくけど」
ニヤニヤ。
あくどい笑みを浮かべるヨウに俺はたっぷり間を置いて、「あはは。行こうぜヨウ」俺の家は煩くて敵わないや、とチャリを押して前進。
笑声を漏らすヨウは最初からそうすりゃいいのに、と揶揄してきた。
ただひとり、シズだけは口を結んで思案しているようだったけどアパートに向かう間は気付かぬ振り。
それがシズのためだと思った。