青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―



「矢島は休学していたらしい」
 


俺の疑問はすぐ解消される。
 
利二が小耳に挟んだ情報を俺達に提供してくれた。


矢島は夏の終わり頃から休学届けを出していたらしい、と。


だから出席日数・総学の時間が足りないのも頷けるし、もう一度二年生をしているのも納得だ。


「剣道はやめているそうだが」


それはそれは機敏な動きで相手を打ち負かす手腕の持ち主らしい、と利二は教えてくれた。


それも知っている、あいつはヨウの懐に踏み込んで一発かましたんだから。
 

俺はその光景をバッチシ見た。

あいつの回り込みは本当に俊敏で、相手の動きに対しても臨機応変に対応していたっけ。

動きの基礎を剣道で培ったんだろうな。
 

「だけど、なんで荒川さんに敵意を?」
 

利二の素朴な疑問はヨウの怒りを思い出させたらしい。

「あぁあんの野郎!」

逆恨みもいいところだと体を微動、握り拳を作って次会ったら絶対かます。


有無言う前にかましてやると机上に大地震。


よって俺と利二は内心でビビり、周囲の人間は表に出してビビっていたという。


いや、幾ら付き合いが一年経ったとはいえやっぱ怖いもんは怖いよ。ヨウのご立腹。

舎弟の俺が怖いくらいなんだから、周囲の人間が表に出してビビるのはいた仕方が無いことだと思う。



ヨウの苛立ちはたむろ場でも続いた(あ、俺は当然矢島の下には行かなかったよ! 呼び出されても行くもんか!)。
 
一体どんだけ怒ってくれちゃってるの、こいつ。

こっちが呆れ返るほど怒っていたものだから、掛ける言葉も見つからない。


まあ…、ヨウは負けず嫌いでもあるからな。


学内に矢島のような態度を取る奴も珍しいし、久々に闘争心が掻き立てられたんだと思う。

ヨウに対してあんな傲慢な態度、日賀野以外に取る奴もいないし。
 

こういう場合はそっとしておくしかないと思う。

ヨウを馬鹿にされたモトや俺のことを愛してくれているキヨタも、チョー機嫌が悪かったしな。
 

飛び火しないことを祈りながらたむろ場で過ごしていると、他校生の仲間がやって来た。


仲間が顔を揃えばきっとヨウ達の機嫌も回復するだろう。


そう高を括っていたんだけど、


「あのケイさん」


ココロが複雑そうな顔をして俺に歩んできたから、その願いは叶わなくなる。
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