青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


 
 
矢島との一件があったせいか、その日の午後からヨウの機嫌はすこぶる悪かった。


 

午前中はお得意の思いつきで、「モトにサプライズしてやっか!」なーんて嬉しそうに口ずさんでいたっていうのに。


今のヨウはぶすくれイケメン不良くん。


食い物の恨みはなんとやらで午後の間はずーっとかけうどんを口走っていた。


結局かけうどんは残すしかなかったんだけど、半分くらい残っていたし、ヨウが怒れるのも分かる。

 
危うく午後の授業をサボりそうになったけど、俺の宥めでどうにか思い止まってくれてキャツは授業中不貞寝をしていたという。


毎日まいにちサボってちゃ欠課が増えて、進級が危うくなるしな。

少しは我慢して授業に出てくれないと。


俺も来年また二年をしちまいかねないんだぜ!


帰りのSHRを迎える五分前になってもご機嫌ナナメのヨウに、周囲は腫れ物を扱うような態度で敬遠。


その態度すらヨウの癪に障るみたいだったけど、勇者でありヨウと気さくに喋ることのできる利二が様子に気付いて声を掛けてきた。
 

「どうしたんですか? 荒川さん。とても不機嫌ですね」


するとヨウはよく聞いてくれたとばかりに、「マジねぇんだよ」利二に愚痴り始める。
 
どうやらヨウは、グツグツと煮えている愚痴を事情を知らない誰かに聞いて欲しかったらしい。


そしてその愚痴を同調してもらいたかったんだろう。


矢島かけうどん事件についてブツクサブツクサと文句垂れた。

話を聞いた利二は、微苦笑を零しながら「酷い話ですね」と相槌。


「だろ?!」同調されたヨウは、少し胸がスーッとしたのかアリエナイんだと声のトーンを幾分高くした。
 

「人の事をおちょくったばかりか、俺のかけうどんまで台無しにしやがって。くそっ、あいつ喧嘩売ってやがる」

「矢島俊輔。確か、留年した先輩でしたよね。自分が知る限り、彼は学内でもなかなかの頭の良さで、そうそう剣道の級所持者らしいですよ」


「知ってる」あいつの取り巻きが言っていた、ヨウは素っ気無く返す。


俺は疑念を抱いた。頭が良いならなんで留年しているんだ?

出席日数や総学の時間が足りなかったのか?

留年なんてそうするもんじゃないだろうし、もっかい二年をするっても相当な勇気だぞ。


だって自分の同学年が先輩になるんだから。


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