青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


「軽く頭皮が切れたな」


冷静に自己分析する川瀬は呆けているモトに、すぐ立つよう胸倉を掴んで一喝する。
 

まだ目を白黒させているモトに何を間抜け面を作っているのだとガンを飛ばし、これくらいじゃ死なねぇよと川瀬は相手を突き飛ばして敵の蹴りを腹部で受け止める。


床に滑るように倒れる川瀬、一連の動きにまた庇われたのだと気付いてモトは彼に仕掛けてくる不良のバットを引っ手繰る。


柄頭で鳩尾を突き、相手の動きを鈍らせた隙にバットで足払いをすると川瀬の下に駆けた。

なんで庇ったのだと繰り返すモトに、

「まだ分からないのか」

だったら底知れぬ阿呆だと川瀬は頭部を押さえながら、毒づいて動揺している相手の胸部に軽く拳を入れる。


「今だけ手を組め…っつったのは…、寄せ集めチーム作ったのはお前だっ…。じゃあ、最後まで責任持て」
 

言いだしっぺがやられてはこっちが困るのだと、川瀬はブレザーの袖で血を拭う。

息を詰めるモトに鼻を鳴らし、


「どーせ俺は足しかねぇ」


だったら足で何か活かせることをしないと話にならないのだ、川瀬は言うや否や駆け出す。


向かうはピンチを迎えているキヨタの下。

俊足を活かして腹ばかりを蹴られているキヨタを助けるため、スライディングで敵の足元を狙う。

体勢を崩す相手の下敷きになった川瀬は、「本当にらしくねぇ」とごちていた。


頭部をやられてダメージを受けない人間はいない。

川瀬は思った以上にダメージを受けているようだ。


キヨタはどうにか危機を脱したようだが、向こうは川瀬の足の速さに気付いたらしい。


「やめっ!」


目論みに気付いたモトが駆け出すが、相手の動きの方が勝った。

すぐさま対策を打つために曇りガラスの一片を引っ掴むと、瞬く間にそれを川瀬の腿に突き刺す。
 

悲鳴にさえならない声がモトの鼓膜を打った。


(おい、まじかよ…、そんなのってありかよ)


なんであいつがそこまでされなくちゃいけねぇんだよ。

そりゃムカつく奴ではあるけど、だけど、だけど!
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