青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「モトッ…、逃げろ!」
キヨタの喝破に無茶言うなとモトは苦笑する。
しっかりと体重を掛けられて固定されているのだ。
動けるわけないではないか。
影の動きで分かる敵の行動に、モトは咄嗟に瞼を瞑り、激痛を覚悟した。
「ヅッ!」
相手の悲鳴が聞こえ、背中から重みが消えたのはこの直後。
瞠目するモトが顔を上げると、
「ホームラン!」
口笛を鳴らす川瀬の姿が飛び込んできた。
持っていた護身用のバットに回転を掛けて、相手の脛向かって投げ飛ばしたようだ。
護身がなくなったため、川瀬は呆気なく不良のひとりに蹴り飛ばされてしまう。
「か、川瀬!」
素早く起き上がるモトに、先程の魔の手が襲い掛かる。
脛を擦っていた不良がバットを横に振ってきたのだ。
一振り目は回避することに成功したモトだが、二振り目は回避ができず、顔面向かって鉄棒が飛んでくる。
骨と金属がぶつかる生々しい音が一室に響いた。
こめかみに伝う鮮血に、今度こそ言葉を失うモト。
無理やり伏せられた頭を上げれば、
「マージらしくねぇ」
蹴り飛ばされた筈の川瀬が痛みに顔を歪めながら、熱っぽく息を吐いた。
「なん。で」
自分を庇うのだと目を見開くモトに、
「はあ? なんで…だと?」
言いだしっぺのくせにお前、舐めてンじゃねぞ、川瀬が両膝をついて舌を鳴らした。