青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「アイッデー! 俺の手は鋼鉄じゃねえ。繊細だぞ阿呆! わりかし柔らか素材でできてるんだからな!」
一々ノリをかます兄分は荒呼吸を繰り返すキヨタを守るため、そのバットを乱暴に振り回し、誰も近付けさせないようガードを張った。
兄分では勝てない。
応戦しようと上体を起こすキヨタだが、「無理するな」もう大丈夫だと兄分が肩を押し返した。
よって床に体が沈む。
自分の負傷を見抜いているらしい。
けれども兄分だけでは…、眼球を動かして状況を把握してみる。
そこには、
「男は拳だろうがゴラァアア!」
道具に頼る貴様等は女子かぁああ!
咆哮にも似た雄叫びを上げてフックをかましているタコ沢の姿が。
更に一室に飛び込んできた人物にキヨタは勿論、兄分も目を削ぐことになる。
剣呑と目を細めるその人物は負傷者に視線を流すや、「おい」誰だ、あんの舎弟たちを可愛がってくれた輩は、静かに殺気立つ。
―…矢島俊輔だ。
その美形に怒気を纏わせ、灰色の髪を軽く揺らしながら室内に歩む矢島は転がっていたバットを持つと、脚力をフルに使い、素早い回り込みで相手の懐に入った。
容赦ないバットの一振りだが、矢島は慈悲など与えないらしい。
「千草と渚に」
手ぇ出した奴はどこぞのどいつだ、その骨全部折ってやるから出て来い、ぎらついた眼で視線を飛ばしていた。
最初こそ兄分たちにも敵意を含む眼を飛ばしていた矢島だったが、なんとなく状況が掴めたのだろう。
すぐに此方への敵意は霧散する。
「お前等か」
あんの舎弟を甚振ってくれた命知らずは、残忍めいた笑みを浮かべ纏めて掛かって来いと挑発した。
「三倍返しは当たり前だと思え。恨むなら、自分の愚行を呪うんだな」
「こわっ」
兄分は怖じを口にしていたが、気持ちは分かると同調。
自分を庇っている手に力が篭っていた。
矢島の眼光の鋭さと踏み込みの速さだけで目測、実力者なのだと判断した輩はやや逃げ腰になる。
「来ないならこっちから行くぞ」
安心しろ、誰一人逃がさないから、不敵に笑う矢島が床を蹴った。