青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
(弥生ちゃんはハジメさんとディープしたんだ。私は…、どうだろ? ケイさんとディープをしたいと聞かれたらどうなんだろう…、ディープ。ディープ。でえーぷ)
想像した瞬間、頭から湯気を出してしまう。
「いやそんな」
私は別にそこまでは、食べかけの苺タルトにフォークを刺しては引き抜き、刺しては引き抜き。
仕舞いにはどうしようと持っていたフォークを手放して両手で頬を包む。
進展が欲しいか? と聞かれたら欲しいかもしれないけれど、アダルティな世界にはちょっと勇気がいることで。
いやでもキスくらいならアダルトになったってッ、どうしよう、自分も少女漫画チックな展開を期待している気がする。
「(強引まではいかなくても、でも、もし真剣にディープを迫られたらっ、うわぁああ断れないぃいい!)」
「……、ココロ。なんか自分の世界に入り始めたね」
「……、限りなくハッピーな妄想をしているんだろう。多分」
女友達が遠目でココロを見守る。
それに気付かないココロは、ハタッと考えを一転。
もしも何もされなかったらどうなのだろうと考え始める。
「(好きと言われても、何も進展がない。ディープもなにもない。それってつまり私に魅力が欠けているってこと…で…、胸…、やっぱり胸だよね。Aカップだし!)」
「……、ココロ。落ち込み始めたよ」
「……、限りなくアンハッピーな妄想をしているんだろう。多分」
どーんと落ち込んで溜息をつき始めるココロに、女友達も溜息をつく。
今しばらくそっとしておくべきだろう。
「あれ、あなた方は圭太先輩の」
第三者から声を掛けられたため、自分ワールドに浸っていたココロも見守っていた二人も顔を上げる。
テーブル前に立っていたのは堤ひなのと呼ばれたちみっこい少女。
響子やココロと同じ制服を身に纏っているため、二人の後輩に当たる。
またケイの後輩にも当たる女子高生で、現在書道部に属している。
以前、書道出展でケイに迫っていたひなのが目前に現れ、ココロはつい引き攣り顔を作ってしまう。
それに気付かないひなのは、こんにちはと挨拶してきた。ついで三人でお茶会ですか? と綻んでくる。
「ひなのちゃんだったね。こんにちは。うん、お茶会してるんだよ」
弥生が受け答えすると、「別名女子会ですよね!」ノリ良く笑う。