青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―
「その…、なんで成り済ますのかなぁって…疑問を抱いて」
「んなの決まってるじゃん! あんちゃんにとって荒川庸一は不倶戴天の敵だからだ! あいつを誘き出すには舎弟が一番の餌になる!」
不良のクセに、不倶戴天なんてよく知ってるな、谷。
谷は鼻息を荒くして、「あの野郎めっ!」両手で拳を作った。
思い出しただけでもムカつくっ、しきりに奥歯をギリリと噛み締めている。
奥歯の表面が磨り減るんじゃないかってくらい歯軋りしてるけど…、んー、つまり俺の名前を悪用したのはヨウへの私怨ってことか?
あいつを誘き出すために…、大方、ヨウの喧嘩好きが災いしての私怨だろうけど、なんにしても見過ごせないよな。
俺の名前を使っているなら尚更だ。
フーッと毛を逆立てている谷を宥めて、川瀬は「とにかくだ」俺を見据えてきた。
「パシは俺達の言うことに従っていればいいんだよ。
今日の昼休み、適当に新入生をとっ捕まえて脅す。その間、俺等は田山圭太の下僕という設定で一緒に脅しに掛かる。いいな!」
全然良くないに決まってるでしょーよ!
どんだけ俺を悪役に仕立て上げたいんだっ…、俺は善良な市民の一端だぞ!
……まあ、あいつ等の目論見では俺の噂にヨウが食らいついて、あいつが犯人捜しに単独行動を起こしたところへ、どっかーんと奇襲を掛けるってカンジだろ。
ヨウの仲間意識の高さは飛び抜けているからな。ヨウなら単独で犯人捜しをするって推測してたんだろう。
確かに、あいつならやりかねない。
あいつは本当に仲間を大切にする、我等がリーダーだしな。
悶々と思考を回していると、「コーラ」矢島が命令口調で俺に言ってきた。
コーラって単語だけ出されても…、あ゛、まさか。
「えーっと、もしかして買って来い…みたいな?」
「あ゛?」
「ですよね! 買って来ます! そちらの二人は? 同じものでいいんですかね!」