青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


すぐにチャイムは鳴った。

クラスメートが次々に教室に入って着席する中、俺は頬杖をついて窓の外を眺めていた。担任の前橋が入ってきて点呼を取り始める。

耳を傾ける限り、ヨウ、利二、タコ沢がいないらしい。

三人揃っていないってことは、チームでなにかしているのかもしれない。


気にはなるけど今は積極的にはなれなかった。


なんとなくチームメートが此処にいないことが安心してしまうのは、俺自身の弱さの問題だろうか?

あんなに皆の下に戻りたかったのに。


朝のSHR後、俺は前橋に個別で呼び出される。

肺炎になりかかっていたってことで長期欠席届を手渡された。

少しは欠席を大目に見てくれるのかな、とか甘ちゃんなことを考える俺を余所に、前橋は負傷している生徒を見て溜息。


「なあ田山」


出席簿で教卓をトントンと叩きながら、話を切り出してくる。



「少し冷静に自分の人生ってのを、考えた方がいいと思うぞ。
お前、このままで本当にいいのか? 今回はその程度で良かったものの、その内人生がめちゃくちゃになるぞ」



中学と高校は違うんだ。

最悪退学になる可能性もある。

それらを視野に入れて友達は選ぶんだな。


いつまでも大人が関与してくると思うなよ。


社会目線から物事を見てくる前橋は、不良とつるんでいる俺に警告を出してきた。

反論したかったけど、向こうが有無言わせてくれない。

出席簿で頭を小突いて、教室を出て行く。


背を見送った俺は長期欠席届に目を落としながら自分の席に戻る。

いつまでも印刷された紙切れを見つめていると、

「よっ。田山」

光喜が気さくに声を掛けてきた。

ここで初めて俺は気付く。
今日はじめてクラスメートと話したな、と。


「はよっ」


挨拶を返す俺からプリントを取り上げ、「長期欠席届?」まさかお前、これで欠席を全部免除してもらうつもりじゃないだろうな? と光喜。

力なく笑う俺はそんなことないと返すんだけど、光喜は怪しいと疑心を向けてくる。

俺は光喜のリアクションに困ってしまった。


あれ、こういう時、なんて返せばよかったんだっけ。


なんでなにも出てこないんだ。


おいどうした、調子ノリ。


頭が真っ白だぞ。

頭の中が雪国。

一面銀世界。



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