一途に IYOU〜背伸びのキス〜
手を振り払って、櫻井の肩を強く押す。
そのまま床に押し倒すと、櫻井が驚いた顔をしてあたしを見上げた。
「さ、咲良……?」
「あたしが椋ちゃんを吹っ切るために必要な事なら……あたしがするから」
馬乗りになったまま見下ろすと、櫻井が苦笑いする。
「……積極的だな、咲良」
そんな櫻井を見つめたまま、Yシャツのボタンに手を伸ばした。
……大丈夫だよ。
キスだって許せたんだから。
諦めの悪い自分の気持ちに踏ん切りをつけるには、必要な事なんだから。
このままいたら、あたしはきっとまた、椋ちゃんに向かって走り出しちゃうもん。
また、迷惑をかけて、椋ちゃんを困らせちゃうもん。
もう、椋ちゃんのあんな顔は見たくない。
『ごめん』なんて……聞きたくないよ。