一途に IYOU〜背伸びのキス〜


いつまで経っても気持ちが切り替えられないなら、無理やりにだってそうしなくちゃ。
じゃなきゃ、いつまで経っても椋ちゃんにしか恋できない。


だから、自分で気持ちにケリを……っ。

櫻井のYシャツを掴んでた手に、ポタって水滴が落ちる。


「咲良……涙が……」
「ちょっと待って。今、止めるし……すぐ、続きするから。待って……」


もう……消えてよ。


いつまでもあたしの頭の中にいないで。

出てってよ……。


本当の椋ちゃんは、あたしを選んだりしてくれないのに。
記憶の中の椋ちゃんが、あたしに微笑みかける。


『咲良』って、優しい声で呼びかける。



何度も、何度も――。









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