一途に IYOU〜背伸びのキス〜
不思議に思いながらじっと見ていると、パパは苦笑いしながら答える。
「咲良にはすぐ見破られるな。
実は、パパの会社の取引先で、料理教室をやってもいいって人がいてな。今度その会社と大きな仕事で提携を……」
「やだ」
ぴしゃりって断わってから、パパを見て言う。
「仕事関係の事を家庭に持ち込まないって、ママとの約束でしょ」
「……そうは言うけどな、今まで持ち込まずにきたんだから今回ぐらい……」
「とにかく! いずれ習うにしても、今はしない」
「そうか……。咲良はパパの会社が潰れてもいいのか」
いい年して不貞腐れた顔をするパパ。
言いがかりみたいな事を言われて顔をしかめてたら、焼きあがったパンを持ったママがやってきた。
「楽しそうね。なんの話?」
「いや、咲良と葉山くんが付き合い始めた事を喜んでただけだよ」