一途に IYOU〜背伸びのキス〜


さすがのパパも、ママの前では、仕事に協力して欲しいとは言えないみたいで。
料理教室の話題が終わった事に安心してため息をついた。

しばらくふたりきりにならなければ、パパも諦めるだろうし。
そんな事を思いながら、ママのパンを頬張った。


……なのに。


『ごめんね、咲良! ママ、また間違えちゃったみたい!』


そんな留守電が入ってたのに気付いたのは昼休み。

吹き込まれていた言葉を辿ってカバンの外ポケットに手を入れると、パパの会社名入りの封筒が出てきた。

届けるのは別にいいけど。

パパと顔を合わせたら、絶対に今朝の料理教室話の続きをされるに決まってるしなぁ。


正直、気が進まない。

これ、大事なのかなー……。なくしちゃったじゃ済まされないかなー……。


なんて考えが頭を一瞬よぎったけど、諦めて、ため息をつく。


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