一途に IYOU〜背伸びのキス〜
っていうか……。
ママがおっちょこちょいだって知ってるんだから、パパもママにそういう雑務を頼まなければいいと思う。
……その前に、毎朝パパのカバンと同じ色のカバンを、同じ場所に置くのがいけないのかもしれないけど。
明日からやめよ。絶対やめよ。
受付のお姉さんが、パパを呼ぶっていうのを全力で断わって。
なんとか顔を合わさずに会社を出て少し歩いたところで、立ち止まる。
目の前には、あたしと同じように立ち止まってる……椋ちゃんを狙ってるらしい、女の人の姿。
「こんにちは、須田さん。いつかはどうも」
そう言って微笑むと、須田さんは顔をしかめた。
「名前、葉山さんからでも聞いたの? 言ってないわよね」