一途に IYOU〜背伸びのキス〜


っていうか……。

ママがおっちょこちょいだって知ってるんだから、パパもママにそういう雑務を頼まなければいいと思う。

……その前に、毎朝パパのカバンと同じ色のカバンを、同じ場所に置くのがいけないのかもしれないけど。

明日からやめよ。絶対やめよ。



受付のお姉さんが、パパを呼ぶっていうのを全力で断わって。

なんとか顔を合わさずに会社を出て少し歩いたところで、立ち止まる。

目の前には、あたしと同じように立ち止まってる……椋ちゃんを狙ってるらしい、女の人の姿。


「こんにちは、須田さん。いつかはどうも」


そう言って微笑むと、須田さんは顔をしかめた。


「名前、葉山さんからでも聞いたの? 言ってないわよね」







< 196 / 342 >

この作品をシェア

pagetop