一途に IYOU〜背伸びのキス〜


椋ちゃんが、着替えるために入った寝室。
その後ろを歩きながら即答したあたしを、椋ちゃんが顔だけで振り返って笑う。


「ついてくって、そしたら大学はどうする?」
「そんなの、椋ちゃんの転勤先から通えるところにすれば……」
「もしも、俺の仕事のカタがついて、こっちに戻る事になったら?」
「そしたら……あたしも転校してこっちにくればいいし……」
「それがイヤだったんだ。
この間も話しただろ? 俺のせいで咲良の選択肢が減るのはイヤだったって」
「あ……」
「それに、そんな理由で大学に編入したりしたら、就職の時必ず不利益に働く」



『もし付き合ったりしたら、大学だとか社会人になった時、俺の存在が咲良の自由を奪う気がして踏み止まってた』

両思いになった日の夜、家まで送ってもらう車の中での会話を思い出す。




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