硝子の破片

正樹Side

ボクサーパンツを洗濯機に放り込むと、正樹はバスルームの扉を開いた。


リンを抱く前に、汗を流しておいたほうがいいと思った。


バスタブにはたっぷりのお湯が貯まり、湯気と柚の香が充満している。


子供の頃寒い冬になると、母親が生の柚を湯舟に浮かべてくれた。


菜々子がそれを口にしようとして、正樹が取り上げると、火がついたように泣き出したのは懐かしい思い出だ。
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