硝子の破片
幼い日の菜々子は猿にとてもよく似ていた。


褐色の肌と短く切り揃えたベリーショートが印象的で、正樹は彼女を弟のように可愛がっていた。


それが今になってはどうだ。


父親の転勤を機に、中学から高校に進学するまでの三年間を、正樹は宮城県で過ごしたのだが、菜々子はその間、驚愕の変貌を遂げていたのである。


元々、整った顔の造りをしていたのかもしれないが、彼女と再会した正樹は歓喜の声を上げられずにはいられなかった。


西洋人形を思わせる目鼻立ちに、透き通る白い肌。


14歳になった菜々子の胸は豊かな膨らみを帯びていて、鳥ガラを連想させたかつての面影は陰も微塵も残っていなかった。
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