ONLOOKER


「なんなの」
「いやだって、なんか物憂げな顔で何言い出すのかと思ったら、『めんどう』って……」


ふふ、と奇妙な声を漏らす友人を一睨みして、夏生は憮然とまた溜め息を吐いた。


「いいよね、聖は。生徒会役員っていってもただのつっこみ役だもんね」
「ちげえよ!? 俺書記!」


聖、と呼ばれた彼――柏木聖(かしわぎひじり)は、眉尻を下げて口をぽっかりと開けて訴える。
だが夏生は呆れたような表情を変えずに言った。


「違うでしょ。今日から会計」
「あ、そうだった。やっと俺の無駄な特技が活かされるんだった」
「クイズ番組で披露した暗算が凄かったから
会計長って、意味わかんないんだけど」


夏生と軽口を叩き合っている姿からは想像しにくいが、聖は、名門高校の生徒であることとは別に、芸能界での成功者という別の顔も持っている。

歌に踊りに芝居にトーク、加えて優秀な頭脳とやんごとなき家柄。
そんな完全無欠の三人組アイドルグループ『KNIGHT』の一員として、今やテレビで顔を見ない日はないというくらいの人気っぷりなのだ。

金髪に日本人離れした白い肌、つり気味の大きな目がトレードマークの聖は、外見だけでいえば、アシメウルフの髪型でさえ、この左右対象の荘厳な校舎には似つかわしくない。
だが彼の頭の良さは夏生も小さい頃からよく知っているし、父親が歴史ある柏木記念総合病院の院長であることも、紛れもない事実だった。

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