異常の兄弟
「あれ、」
今に走り出しそうなタクシーを指さす。
「追っかけて」
後ろから覗き込むように巡に言えば露骨に表情が険しくなった。
「断る。面倒だ。」
「追っかけて」
頑なに譲らない果に苛立ちが募る。
「嫌だっつってんだろ。」
低い声が喉から流れ睨んだ目が後ろの果を射抜く。
「いいから 追っかけてよ」
相変わらずの無表情で再びそれを繰り返す。
こうなっては意地でも折れない。
そのことを知っている。
「ふざけんなよ…。」
小さく呟きグリップを回す。
激しいエンジン音。つい先ほど発進したタクシーに向かい彼の愛車は轟音をたてた。