傲慢彼女のラプソディー
出会い

吉昭は、今日傘は必要ないと断言した母親に対して、腹を立てていた。



髪も染めず、ピアスも開けない。制服も着崩した様子は見られない。
一般的に言う「真面目」がよく当てはまる男、それが吉昭だった。

その日は、放課後に補習があるため、朝から少し気分が落ち込んでいた。
学校でいつも通り授業を受けた後にまた勉強をしなければならない。そう考えただけで、頭が痛くなってくる。


「今日の一位の運勢は、おうし座のあなた!何か素敵な出会いがあるかも?!」


テレビの中の美人な女子アナウンサーが、笑顔で伝える。
人間とは調子の良い生き物で、自分に好都合な情報だけを仕入れがちだ。
吉昭も例外ではない。
いつもは、聞き流すだけの占いだが、自分が一位となれば話は別だ。
しっかりと今日のラッキーアイテムを聞き届け、リビングのテーブルから席を立った。



「今日傘いると思う?」


吉昭は、リビングで洗濯物を畳んでいた、母親に訪ねた。
天気予報によると、降水確率40%。外の天気は晴れているとは言えないが、雨が降り出しそうな感じはしなかった。
こういった曖昧な数字は吉昭を困らせる。傘を持って行けばいいのだが、余計な荷物は持ちたくない。

そんな時は、自称勘が鋭い女の母親に訪ねる。正直、外すことも多々あるが、吉昭は優柔不断な性格のため、ハッキリと意見を述べる母親に頼ってしまうのだ。




「あー……。いらないね。」

「分かった。」




その後、バタバタと身支度を済ませ、通学鞄を持ち玄関へ急ぐ。
そういえば、と思い出し、今日のラッキーアイテムであるポケットティッシュを無造作に鞄に突っ込む。
吉昭は母親の言葉の通り傘を持たず、行ってきますと呟きながら、玄関のドアを開けた。


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