14日の憂鬱
「浩輔。おいっす」


「おはよー」



サトケンも、加奈子もいつものように明るく返事をした。



「……」


彼が一瞬だけ、無言のまま私のほうを見る。



「……おはよ」




私が小さく挨拶をすると、彼は軽くうなずいた。
そして、私たちから離れていく。




彼が私と加奈子と同じ教室へ向かっていった。
その姿が小さくなったとき、サトケンが口を開いた。





「あいつもチョコとか貰ったりすんのかな」



「……」




私は言葉に詰まったまま。


「……さぁね」



加奈子がサトケンの質問に一言そう言った。


「あいつ、あんまり話さねーけど、コワモテなところが結構人気あるらしいしなぁ」


「……」



「……そーだね」



今度は加奈子が黙ってしまったので、私が代わりに返事する。






教室へ消えていった彼の背中を見送る。







サトケンがまるで離れているかのように、陽気なその声を私は遠くに感じていた。



< 8 / 52 >

この作品をシェア

pagetop