ONLOOKER Ⅱ


歩み寄ってくるウサギから、ざっ、と音が発せられた。
スピーカーから聞こえるノイズに似ている。

二人は、肩を揺らした。

明るく笑う表情とはどう考えても不似合いな声が、着ぐるみから響いた。
いつの間にか辺りには人気がなくなり、すっかり静まり返っていた。


「ザ、……シズミ、サトキチ……ザザ……ヲ」


変声機を通したような、耳障りに割れた声。
背筋に、ず、と冷たいものが走る。


「……サトちゃんが……な、に……?」


直姫の肘あたりで、恋宵の手に力が込められる。
同時に、震える声が絞り出された。

それに答えてか、それとも無視してか、着ぐるみはまた“喋った”。


「シッテ……ザザッ、ザ……イル……ナ」


確信のこもった問いだった。
二人が志都美里吉を知っていることは、恋宵の今の発言ですでに裏付けられている。

ウサギは固まったままの直姫と恋宵にさらに近づくと、風船の紐を握った手を、その顔の前に突き出した。


「え、なに……」


それにはなにも答えずに、毛羽立って薄く汚れた白い手を、ただぐい、と押し付ける。

直姫は躊躇いながらも、風船を受け取った。
思わず着ぐるみの顔を窺い見るが、満面の笑顔を浮かべたままのウサギの顔で、表情など読めるはずもない。

着ぐるみは手を引いて背中を向け、それからは一度も振り返らず、なにも言わないままで去って行った。

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