ONLOOKER Ⅱ
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ふと、視界の隅で、明るい桃色がちらついた。
この遊園地のマスコットなのだろう、入り口や園内の看板など至るところで見かける、笑顔が胡散臭い三頭身のウサギだ。
その着ぐるみが直姫たちの背後に、風船をひとつだけ手にして立っていたのだ。
「あ、ラビィくん」
「ラビィくん?」
「下で風船配ってたにょろよー」
「へえ……?」
恋宵が、ぱたぱたと手を振る。
ラビィくん、というらしい着ぐるみは、反応を返さない。
愛想の悪いマスコットもいるものだと、自分の無表情を棚に上げて、直姫は思った。
だが、観覧車の前や売店のそばで風船を配っていたはずのマスコットが、なぜこんなところにいるのだろうか。
展望台に大きな着ぐるみのマスコットなんて、何となく違和感のある組み合わせに思える。
しかも、それが、じっと二人のほうを見て、突っ立っているのだ。
前歯の飛び出た陽気な笑顔が、不気味に感じられる。
ウサギが不意に一歩進み出て来たので、直姫は思わず後退った。
ぺちゃ、と軽い音がする。
恋宵が持っていたソフトクリームを落としてしまったのだ。
直姫は振り返ったりはしなかったが、落とした本人も、足元にはちらりとも視線をくれずに、ウサギを凝視しているのがわかった。
ウサギの着ぐるみが、大きな足をぱたりと動かす。
一歩、また一歩と、ゆっくり近寄ってくるのだ。
直姫の肩のあたりで、掠れた音が上がった。
袖をきゅっと掴まれる。
だがそんなことには、少しも意識が向かない。