ONLOOKER Ⅱ
「まあ、はい」
「気付くの遅いよ。あのメールの時でしょ」
「しょうがないじゃないですか、混乱してたし……」
急に自分に話が振られたことに驚く様子もないどころか、言い争いにまで発展しそうな彼らに、置き去りにされた三人は顔を見合わせるばかりだ。
「そもそも先輩、気付いてたならなんでもっと早く」
「ちょっ! ちょっと待て直姫、」
「……なんですか?」
「さっきから、気付いてたとかなんとかって、何の話?」
無理矢理に遮って説明を求めた聖に、今度は直姫が訝しげな視線を向ける番だった。
それからすぐに、「なんだ、分かってなかったんですか」と小さく呟く。
彼女がここまで内心をあらわにするのは、とても珍しいことだ。
「おかしいと思いませんか」
「え。なにが」
「全部です。最初から」
「最初……?」
「サトちゃんが、マフィアに狙われる危険も省みずに夏生先輩とデートしたいって言い出したことも、そのせいで誘拐されたこともです。計画的すぎる」
女の子ならば(彼女、いや彼は女の子ではないのだが。全くややこしい)想い人と親しくなりたいと思うのは当然で、それならば二人きりでのデートがいいというのも、また当然のことだ。
しかしそれは、その“女の子”が一般人だった場合に限る。
「でも……サトちゃんは夏生が好きで、二人でデートがしたくて、遊園地にも行ったことがないから行ってみたくて」
「それですよ」
「んにゃ?」
情報を脳内で整理整頓するようにぶつぶつと呟く恋宵に、直姫は言った。
一番肝心な前提が、すっぽりと抜けているのだ。
「デートを極秘で計画して、行き先を遊園地に決めたのは、つい四、五時間前なんですよ。マフィアだかなんだか知りませんけど、いくらなんでもそんなこと、知るわけないじゃないですか。サトちゃんがデートで行ってみたい場所なんて、そんなの」