ONLOOKER Ⅱ


直姫は、いつもよりずいぶん饒舌になっていた。
あまり長く話すことには慣れていないので、舌が回らなくなりそうだ。


「え、あ、確かに……」
「もしずっと監視してたとしても、ヒントになるような行動も会話も、ほとんどなかったはずです。だって、隠してたんだから。夏生先輩にバレないようにするの、大変だったじゃないですか。だからあの遊園地に手を回すのなんか、絶対に不可能なんです」
「それはつまり……誰かが、事前に情報を回さないと……?」
「え……ちょっと待ってよそれって、」
「それがさっき紅先輩に言った、確かめたかったこと。これですよ」


そう言って夏生が開いたノートパソコンの画面には、石蕗邸を出る前に転送した、紅の自宅のパソコンに送られたメールが表示されていた。
もう何度も何度も、文面も内容も改行の位置すら暗記するほどに読み返している。

恋宵が、訝しさもあらわに首を傾げた。


「このメールがなんにゃの?」
「准乃介先輩が言ってたでしょ。名義人がわかれば、アドレスを割り出す方法があるって」
「うん……?」
「……あ、」


しばらくじっと白い液晶を見つめていた紅が、声を漏らした。

おかしいのだ。
どう考えてもおかしい。
そうとしか、説明のつけようがない。

ここ最近、放課後は必ず皆で紅の家に集まっていたこと、離れで過ごしていたこと。
あの部屋にパソコンが置いてあること、そのパソコンが、紅の物であること。
自動車免許を持っている者が、生徒会にいること。
そしてボディーガードどころか、夏生にすら秘密で進行していたあの計画のことを、知っている。

その条件に、当て嵌まる人物は。


「え……でも、どうして……?」


「どしたの」と声をかけられて、紅は恋宵のほうを見た。


「犯人は……誘拐犯に、情報を流せたのは、」


その、迷いながらの口調が、曇った表情が、示すのは。


「……私たちの中にしか、いない……」

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