悪魔なキミと愛契約【番外編】
わからない……
家に、シェフのいる感覚。
どんな凄いものを食べているのだろう。
こんな庶民のお弁当、課長の口には合わなかったかな。
「ん」
ベンチに座り俯いていると、ふと、視界に私のお弁当箱が入ってきた。
パッと課長を見上げる。
「まぁまぁだったな」
課長の後ろから照り付ける太陽が、眩しかった。
「私、慰謝料払わなくてもよさそうですか?」
「フン。
おまえなんかからもらわなくても、金なんて有り余ってる」
課長は私を見下して、柔らかく微笑んだ。
久しぶりに見た、課長の微笑み。
まるで、天使だ。
「な、なんですか、それ。
嫌みですか?
いいですよね、お金持ちの人は、悩みなんてな~んにもなさそう」
膝の上でお弁当箱をコロコロ転がしながら、早口で言った。
課長の犯罪級の微笑みに、どうにかなってしまいそうだったから。
忙しく動き出した鼓動を隠す為に、何気なく言った言葉だったのに。
冗談、だったのに。
「そうでもない」
返ってきた課長の声は、とても暗かった。