俺様婚約者~お見合いからの始まり~
彼女の瞳が次第に潤み出すのを見て、俺はギョッとした。

…俺の予定では、そこまで言うと、もう一度、とお願いされるはずだったのに。

持ち前の勝ち気さと意地っ張りな、百合子の性格が、素直さを押し込んでいる様だ。

涙が彼女の目の横にポロリと零れ落ちた。

「…百合子…」

それをそっと拭おうと手を伸ばす。

すると手が触れる直前に彼女はプイッとあちらを向いてしまった。

もう一度呼び掛けてみる。

「百合子」

すると顔を向こうに向けたまま鼻声まじりで彼女は言う。

「もう、知らないっ。
どうせ、昨日の夜からずっと軽蔑してたんでしょ。そんな女だと思ってるんでしょ。

ええ、いいわよ、そうよ。

たとえ結婚していても、あなたの言う通り、寂しくなったら誰かに頼むわ。
相手は悠斗じゃなくてもいいものね。
そうするわ。」




< 185 / 314 >

この作品をシェア

pagetop