俺様婚約者~お見合いからの始まり~
浅香さんは私の向かいに静かに座ると、私を見てニコリと笑った。

ドキッッ!!

な…、何なの…、どうしようっっ!!

こんなに素敵な男性と初めて会ったかも知れない。

「澤乃井さんとは、お見合いだったそうですね?」

…え?
彼の突然の問いに、ぼんやりと彼に見惚れていた頭がフッと我に返る。

「あ、はい…」

「悠斗先輩が結婚だなんて、まだ信じられないですよ。
あの人は一生独りでいると思ってた。

よほど、百合子さんが魅力的だったんでしょうね」

「え…、いえ、そんなっ」

「しかし、今日はお二人が一緒にいるところを見かけませんね。

まあ、挨拶なんかで先輩は忙しくしているみたいですから、仕方ないですけどね。

…だけど、俺なら百合子さんを連れて回るけどな」

ズキッ…。

心の奥が鈍く痛む。

…そう、今日は悠斗と目すら合わせていない。

私を連れ歩くのは恥ずかしいからだろうか。

出掛けに母からお辞儀の仕方なんかは教わってきていた。

『悠斗さんが恥ずかしくないように、しっかりしなさいよっ』

母の言葉が蘇るけれど、それも全然、心配する必要なんてなかった。

悠斗は私を紹介するどころか、赤の他人の様に接触して来ないのだから。



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