俺様婚約者~お見合いからの始まり~
コンコン。

部屋をノックする音で現実に返る。

「そろそろ教会の方へ移動をお願い致します」

ホテルの係りの人の声に悠斗は立ち上がった。

「…じゃあ、行くか」

「うんっ」

私達は手をしっかりと繋いで部屋を出た。

悠斗と永遠の愛を誓いに今、歩き出している。

教会に向かう途中で彼にふと尋ねてみる。

「…ねぇ、悠斗…。
小さな頃に、桜の木の下でバイオリンを弾いた事、ある?」

悠斗は不思議そうな顔で私を見た。

「桜の木の下…?

何、それ」

「ううん、いいの。
何でもない」

「……?」

彼も覚えていなかった。

いつか、お互いに思い出す時が来るだろうか。

―――。

『おにいちゃん、しゅごぉい』

『すごくないよ。たのしいよ。

ゆりちゃん、ぼくのおよめさんになったら、毎日ひいてあげるよ』

『ほんとー!じゃあ、おにいちゃんのおよめさんになるーっ』

………。




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